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2007-10

お礼の電話、トランプ、「文七元結」

 仕事で思うようにことが進まず、ぼやきたくなる。取材相手との交渉に神経をすり減らす。久しぶりにあきれてしまう。そんなとき、先月、取材でお世話になった映画会社のPR担当Kさんからお礼の電話がくる。映画公開が直前に迫り、地方回りの真っ最中だという。年越し、つまりロングランを狙っていますから、という弾んだ声。いろいろ話したいことはあったけど、気持ちの半分も伝えられず、残念。彼女のおかげで気持ちよく仕事をすることができた。ありがとう。
 夜は、娘とトランプ遊び。7並べ、ババ抜きを教えるが、「もう、トランプってめんどうくさいなー」と途中で集中力が切れてしまう。まだ4歳だから仕方ない。タワーを作って遊ぶ。それにしても、最近、何かと言えば「でも、そんなの関係ねー、オッパーピー」と返す娘。よしお、大モテ。
 寝る前に立川談春の「文七元結」を聴く。“説教”する場面が出てくるのだが、この説教が実にいい。言葉がまっすぐ胸を突く。筋が通っている。江戸っ子だ。もう、こういう人って、落語の世界でしか存在しなくなったのかな。日本人の品格って、本来こうでなかったのか。そう思わせる。

「走ることについて語るときに僕の語ること」、ジョギング

 薬が効いているのか、咳が止まる。それでも、なんとなく体はダルい。しばらく禁酒の日々が続きそうだ。
 村上春樹の新刊「走ることについて語るときに僕の語ること」を読み終える。久しぶりに心を衝く本。レイモンド・カーヴァーの短編からとったタイトルがいい。「〜結局のところ、僕らにとってもっとも大事なものごとは、ほとんどの場合、目には見えない(しかし心では感じられる)何かなのだ。そして本当に価値のあるものごとは往々にして、効率の悪い営為を通しててしか獲得できないものなのだ」。そうそう。うんうん。いくどとなく膝を打つ文章に出会う。来年は、ノーベル文学賞、とってほしいと心底思う。
 病気が完治したら、ジョギングを再開しよう。むくむくと走りたい気持ちが沸き上がってくる。走りたい、走りたい。

病院

 咳が止まらず、ようやく病院に行く。風邪かなと思っていたが、どうもそうじゃないらしい。診てくれたのは、70歳ぐらいの老先生。優しそうに症状を聴いていたが、聴診器をあてると、右の肺から妙な音が聞こえるからすぐにレントゲンを撮ったほうがいいと言われる。え、もしかして、肺炎、肺ガン。
 結果は、黒い影は写っておらずホッとする。3日分の抗生物質をもらって、帰る。肺ガンだったら、きっと進行性が高い家系だからそう長くはないと思う。これで人生が終わるのは少し惜しいな。惜しいなと思うけど、一体、何かやり残したことがあるのだろうか。もう少しのんびりしたい、旅行したい、本を読みたい、人を好きになりたい。もう少しだけなら我慢できる。でも、それでもやっぱり哀しいな。

マロニエゲート、喫茶店「ブリッヂ」、柳家喬太郎

 台風の最中、銀座まで出かける。たいした用事はないんだけど、銀座マロニエゲートをぶらぶら。大人の街、銀座を意識した品ぞろえというが、それほど新味は感じられない。でも、会社の近くにあるので、なにかと重宝しそう。そのあと、向田邦子がよく原稿を書いたという喫茶店「ブリッヂ」でコーヒーを飲む。品のいい白髪の男性がスマートに席を案内してくれた。とくべつ往時をしのぶようなものはなそさうだけど、長い時間の積み重なりが感じられるような雰囲気がどことなくある。ハンバーグ、スパゲティなど洋食メニューの盛りつけが昭和っぽい。朝、偶然にも向田邦子原作の映画「阿修羅のごとく」を観ていたから、少し感じ入ってしまう。森繁久彌が書いた「花ひらき、はな香る、花こぼり、なほ薫る」という言葉がいいなって思う。小林薫が映画の中で言う「少しぐらい人生の艶を楽しんだっていいじゃないか」というセリフも、人間味があふれていて好きだな。久世さんと、もっと話がしたかったなあ。そんなことをぼんやり考えていた。
 iPodで落語を聴きながら帰路につく。柳家喬太郎の「純情日記横浜編」「純情日記渋谷編」がすこぶる面白い。感性が若いなって思う。

『私たちのお弁当』、工房アイザワ、玉子焼き

 娘のお弁当生活が始まって数カ月。それに触発され、ときどき会社へお弁当を持っていくようになった。娘の分は女房が作るから、台所の片隅を借りて自分の分を作る。朝からケンカをしたくないから、お互い余計なことはしゃべらない。家庭内別居が続く。
 参考は「クウネル」の連載から生まれた本『私たちのお弁当』。男性が少ないのが残念だけど、ヒントになる。いつか、僕のお弁当も載せてほしいな。「素材の味で勝負」「少数精鋭の3品勝負」「武骨」が、お弁当作りのモットー。今日は玉子焼き、男の手ごねハンバーグ、タマネギの炒め物カレー風味。彩りに、プチトマトを入れて、およそ20分で完成。冷凍食品は使わないのが、男だ。
 お弁当箱は、工房アイザワの「角長ランチボックス1段」。シンプルを極めたソリッドなデザインが男心をくすぐる。カトラリーと同様、MoMAのコレクションに入れてほしいぐらい。
 そっけないながらも、手製のお弁当はおいしい。仕事に追われながら、ひと息つく。今日は、玉子焼きの味が濃かった。

アビブ・コワテ、オータサン、「イパネマの娘」

 久しぶりのブログ。今日から心を入れ替えて、コツコツと更新しよう。仕事中だけど。
 今月は、「エスノ・ミュージック」の特集を抱えていて、四六時中、アフリカ音楽やハワイアン、ボサノヴァを聴いている。気に入ったのが、心地良いアフロ・ポップを聴かせてくれるアビブ・コワテ。なかなか名前を覚えられないけど、一瞬にして遠いアフリカの大地へ連れて行ってくれる。ウクレレ奏者、オータサンの「ウクレレ・ボッサ・ノーヴァ」もいい。ちょっと野暮ったいと思っていたウクレレの音が洗練されていて、日曜日の朝にふさわしい。欲しいものはあまりないけど、ウクレレが欲しいなと思ってしまう。難しいのかな、ウクレレ。「イパネマの娘」を弾けたらどんなに素敵だろう。

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プロフィール

Author:ナツメ
35歳。妻と娘(5歳)、義母の4人暮らし。職業はライター。趣味は読書、ジョギング、散歩。

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