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2006-09

オペラ「ドン・ジョヴァンニ」、クライマーズ・ハイ

 休日だというのに、5時半に目が覚めてしまった。女房を起こさないように気を遣いながら、自分の部屋に入り、インタビュー原稿に取りかかる。締め切りはまだ先なので、気持ちに余裕がある。のんびり構成を考える。まとまりのない話を、起承転結を考えてまとめる作業はけっこう好き。だから、この仕事を続けられているのかもしれない。書き出しとランディングが決まれば、もう8割方完成だと言える。でも、なかなかランディングが見えてこない。気が付いたら9時を過ぎていて、寝室から娘と女房の笑い声が聞こえる。
 天気がいいので、娘と二人で近所の自然観察公園まで散歩。移築された古い日本家屋に入って遊んでいると、年配のおじいさんからドングリをもらう。
 お昼はベランダにレジャーシートを敷いて、ピクニック気分でおにぎりを食べる。秋の日射しが気持ちいい。
 午後から、一人でオペラ「ドン・ジョヴァンニ」を見に行く。仕事がらみでご招待いただいた。歌の良し悪しはよくわからないが、舞台美術が美しく、心を奪われる。絢爛豪華な衣裳とあいまって、絵画を見ているような気分。「総合芸術」と言われる理由がよくわかった。
 晩ごはんは、近所の居酒屋チェーン。家族3人でお腹いっぱい食べて、飲んでも6,500円とは安い。21時からNHKドラマ「クライマーズ・ハイ」を観る。原作に負けないほど魅力的。キャスティングが実にはまっていて、さすがになんとか賞を受賞しただけのことはある。ずっと見ていたい。来週が楽しみだ。

ジャズ、藤沢周平、夜が弱い

 今月もなんとか無事に校了を迎えられそう。久しぶりにのんびりしながら仕事をこなす。午後からは、来月号の特集「ジャズ」の下調べ。ナット・キング・コール、チェット・ベイカー、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンをiPodに落とす。19時に退社。電車のなかで『藤沢周平 父の周辺』を読みながらソニー・ロリンズを聴く。藤沢周平の一人娘、遠藤展子さんが父の思い出を綴ったエッセイで、興味深い。市井の人々を書いた作家らしく、質素で堅実な暮らしぶりがうかがえる。父と娘、家族の絆がひしひしと伝わってくる。偉大な作家の、頑固で昔気質な一面が意外だ。
 夕食は餃子と酢の物、ひじきの煮物。「私、餃子焼くの上手でしょ」と女房。とくにそう思わないけど「そうだね」。娘とお風呂に入って、1時間ぐらいままごとやお医者さんごっこにつき合わされる。最近、夜が弱い。12時を過ぎるとまぶたが重くなる。その分、朝は早くで6時には目が覚めてしまうけど。おじいちゃんみたい。

ブランド広報

 今日もくたくたに疲れる。こうして神経をすり減らせて、命を縮めているんだろうなって思う。
 ここ数日、撮影用の靴のピックアップで、いろんなブランドを回る。対応してくれるPRの方は、ほとんどが女性で、どうして男性がいないのかなと思う。紳士ブランドにしても、女性ばかりだ。おうおうにしてブランド系のPR担当者は、慇懃無礼な方が多い。ツンとすまして愛想がない。自尊心が高く、友達になれない。それでもなかには、田舎出の素朴な雰囲気のPR担当者がいる。そういうときはうれしく思う。気前のいい原稿を書いて、サービスしてしまう。
 夕食はピザとビール。少し幸せな気分になる。本を読んで寝ることにしよう。

 

目撃、上山博康、エアギター

 夕方からスタジオに入っての撮影。その前、会社を出ると、逆走する一台の車に出くわした。誰だと思って目をこらすと、運転していたのは俳優の松岡俊介、助手席にいたのはUAだった。プライベートなんだろうな。銀座の片隅で、何をしていたのだろう。
 撮影が早めに終わり、松屋でビールとハンバーグの夕食を済ませて帰宅。馴染みの居酒屋があれば、ぷらりと入って、カウンターでグラスを傾けたいところ。
 22時からNHKの「プロフェッショナル」を観る。今回は脳神経外科医の上山博康さんの仕事の流儀。自らプロと言い切るのは、弱い自分を奮い立たせるためなのだろう。茂木さんの質問の投げかけは、独特の空気をまとっていて、信頼できる。住吉さんは僕と同じ歳。やや乗りツッコミ的な質問が多い。サバサバしているところが好き。応援しています。お互いがんばりましょう。
 スガシカオのエンディング曲が流れると、「パパ、この歌好きでしょ」と娘。そう、好きだよ。「私も好き」と言ってエアギターのパフォーマンスさながらに踊り出す。
 どういう意味で好きなんだろう。

「ミュージックスクエア」と「夜のピクニック」、須坂高校

 久しぶりにのんびりしている夜。雨音を聞いていると、高校時代、受験勉強していたころを思い出す。NHKFM「ミュージックスクエア」をよく聴いていたなあと思って、ラジオをつけると、まだやっていたんだ「ミュージックスクエア」。ちょっとビックリ。DJの名前は知らないけど、懐かしい。以前、当時DJの一人だったNさんにインタビューしたとき、「ミュージックスクエア、よく聴いていましたよ」と言ったら「もう、そんな世代なんですね」と驚いていた。そう、あの頃の高校生も、もう30代です。
 この一週間、仕事に追われていた。取材や原稿書きが続き、ストレスてんこもりの日々。まだまだこの忙しさは来週まで続きそう。そんななか、映画「珈琲時光」「逆境ナイン」を見て、恩田陸の「夜のピクニック」をこつこつと読む。うちの高校でも同じような行事があったので、情景が重なる。思い出に浸りながらページをめくる。また、こういうのやってみたいな。どんな気持ちになるのだろう。誰かつきあってくれる人いないかな。
 先週、NHKで長野県立須坂高校の「りんどう祭」を追ったドキュメントをやっていたけど、久しぶりにいい番組だった。不器用で単純で、毎日に一生懸命な高校生たち。いたいた、ああいう奴って思いながらも、涙を流している姿がちょっぴりうらやましかった。
 「人生って、何かを追い求めたり、追いかけられたりするものではなく、抜き差しならない瞬間の連続だと思えるようになった」とは、先週お会いした某歌手の言葉。そうだなって思う。少し心が軽くなる。

「めばえ」と30年前の服

 月曜日だというのに、もう仕事疲れ。肩こりがひどくて、ひどくて。この前、ジョギングしたのにすっきりしない。午前中は、明後日に迫っているインタビューの質問事項を考え、午後からは急遽変更となったページネーションを考える。予定より少し遅れての進行。お願いしていた俳優のインタビューがやんわり断られ、再び振り出しに。別の俳優の方に依頼書を送るが、電話の当たりだと、こちらも難しそう。ストレスが肩こりを助長する。
 高村薫の「照柿」の上巻を読み終える。読み応えがある一方、なかなか進展しない。主人公・合田雄一郎の自宅は、赤羽の団地だという。すぐ近くだ。高村薫は来たことがあるのだろうか。
 帰りに本屋に寄り、娘と約束していた小学館の「めばえ」10月号を買う。帰宅すると、目を輝かせて喜んでいた。今月の付録は、アンパンマンの「かくれんぼツリーゲーム」と「ハンバーガーやさん遊び」。今日はこれだけねと言い聞かせて「かくれんぼツリーゲーム」を作ってあげる。この手の付録は大好き。しばし童心に戻る。完成後、娘と一緒に遊ぶが、いまひとつ面白みに欠ける今回の付録。今朝の朝日新聞に、付録雑誌の記事があったけど、編集者も毎月、企画を考えるのは大変だろう。でも、がんばってください。
 夜、義母が、女房が幼いころに着ていたという服を出してきて、娘に着せていた。ほぼぴったりで、なんともかわいい。時代を感じさせる服だが、それがかえって新鮮で、オシャレさんに見える。娘が結婚して、子供が生まれ、再び着せてあげられたら素敵だなと思う。伝統とか、古いしきたりというのは、祖母から娘へではなく、孫へと継承されるという。そうだなと実感する。

不協和音

 娘と一緒に寝ている部屋で高村薫の「照柿」を読んでいたら、「本読むんだったら、自分の部屋で読んでよ」と女房。言いたいことはあるけど、火に油を注ぐようなものだから何も言わない。新居に引っ越しし、義母と同居を始めてからというもの、女房との不協和音は日に日に大きくなっている。いつか離婚するのかなという思いはずっと前からぼんやり思っていて、最近はぼんやりからしばしば確信をもってそう思える瞬間が増えたような気がする。離婚したら養育費はいくら払えばいいかとか、娘とはせめて週末はずっと一緒にいたいなとか、まず別居から様子を見ようとか、心のよりどころがほしいなとか、そんなことをシュミレーションしてやり過ごす。
 女って、子供が生まれると変わるというけど、こんなに見事に変わるとは思ってもいなかった。些細なことで声を荒げ、猛々しく、汚い言葉を浴びせる。え、つきあっていたころ、そんなことあった? そんな一面があったら結婚していないよ。契約違反だよと、言いたいけど、言えば、また口論になる。
 以前からずっと、どんなに喧嘩をした朝でも、「おはよう」と声をかけていた。それが夫婦の関係を取り戻す僕なりの努力だった。でも、最近はもうそれすらもできない。僕は女房の不機嫌な顔を横目に家を出る。歩み寄ろうとするのに、けっこう努力がいる。

あらかわ遊園

 気持ちよく晴れた土曜日。朝、DVDを返したついでに、自転車で散歩。初めての道を通って、隣町まで走る。倉庫、工場の間をすり抜け、すぐに商店街に入る。ほどなくして見覚えのある駅が現れる。こんなにも近かったとは、驚き。お得な気持ちになるのはどうしてだろう。
 初めての道を走るのは気持ちがいい。以前、インタビューしたMさんも散歩が趣味と言っていたことを思い出す。ずっと前にエッセイストのYさんと一緒に歩いた目黒の町並みを思い出す。あのときの空気と少し似ている。iPodで聴くRCサクセションが心地いい。病にふしている忌野清志郎って元気かなと、ふと思う。
 家に帰ると、娘がどっか行きたいというので、今度は女房の自転車を借りて、2人乗りして「あらかわ遊園」まで出かける。自転車で行くのは初めて。途中、道に迷いながらおよそ30分で到着。メリーゴーランド、コーヒーカップ、ファミリーコースター……と、次々に乗り物を制覇。ただひとつ、観覧車だけは怖いというので、それだけはパスする。
 水遊び場ではしゃいだあと、お昼を食べようと近くの食堂に入ると、娘と年格好が同じほどの男の子を連れたお父さんがビールを飲んでいた。僕より10歳ほど年上だろうか。優しい表情で息子とおしゃべりしている。なんだか同志のように思えてきて、「おたくもですか」と声をかけたくなる。昼下がりのビール、いいですね、と心のなかでつぶやいて、僕もビールを注文する。海老フライ定食を娘と食べていると向こうもこちらのことが気になる様子で、ちらちらとうかがっている。男の子は娘を見て「かわいい、女の子だね」と話している。
 一足先にその親子が会計を済ませて帰ろうとするので、娘に「あの男の子に、いくつって聞いてくれば」というと、つかつかと男の子に近寄っていき声をかける。ビールで赤くなっているお父さんが笑っている。男の子は照れて、小さな声で3歳と答える。「いくつですか?」と、今度はお父さんが僕に声をかけてくる。「うちも3歳なんですよ」。「ああ、そうですか」。それだけの会話だけど少しうれしい。これがお母さん相手だと苦手だけど、お父さんだと、お互いがんばりましょう、と心のなかでエールを送り合える。
 帰りも自宅まで30分ほどかかった。「絶対、寝るなよ。寝たら、コショコショするぞ」「わかったよ、寝ないよ、わたし」と言っていた娘は10分ほどで力尽き、ゆらゆらと後ろで振られていた。

領収書と「逆境ナイン」

 ここ数日のんびりしていた仕事も、バタバタとスケジュールが決まる。
 午前中は細かいショップ情報と、アメリカTVドラマ「LOST」、最近人気の「ヘッドスパ」について短い原稿を書く。取材原稿ではなく、資料起こしなので、やや身が入らない。それでも少しは楽しんで書けて、午後からはいくつかの取材のアポ取り。以前からお願いしていたミュージシャンのインタビューが決まる。先方の電話の対応が良くて、ホッとする。担当マネージャーは僕より少し年上の男性。マネージャーにもいろんなタイプがいて、やっかいだなという方はだいたい声で判断できる。今回は大丈夫そう。経験上、男性マネージャーのほうが、女性よりずっと仕事がやりやすい。
 帰りに、そのミュージシャンのCDをいくつか借りる。レジで女の子に領収書をお願いすると、但し書きのところに間違って会社名を書かれる。新人なのだろう。「これ、違うね」というと、慌てて隣の男の子に尋ねて、訂正してくれる。その慌てぶりが、初々しく、いいなって思う。
 夕食はカレーライスとクリームコロッケ、トマト・キュウリのサラダ。少しだけお酒を飲む。
 書きたいことはいっぱいあるけど、なんだか眠い。明日は少し早起きして、映画を見て、本を読もう。昨日観た「逆境ナイン」は、バカバカしくて面白かったな。

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プロフィール

Author:ナツメ
35歳。妻と娘(5歳)、義母の4人暮らし。職業はライター。趣味は読書、ジョギング、散歩。

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