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2006-07

「かもめ食堂」「ゆれる」「クラッシュ」

 この1週間、映画ばかり見て過ごす。荻上直子監督の「かもめ食堂」は以前から観たかった作品。北欧ブームにのった作品か、という色眼鏡はあったけど、評判通りの良い映画だった。どこか寓話じみた世界観のなかに、小林聡美、片桐はいり、もたいまさこが地に足の着いた演技で、それぞれの魅力を如何なく発揮しながら等身大の現代女性を演じている。20代のありがちな自分探し物語ではなく、人生経験を経た、やや負け組に入るであろうという設定が、見ていて共感できる。
 西川美和監督の「ゆれる」は、間違いなく今年ベスト3に入る邦画。日本の法廷サスペンスもここまできたかと思わせる。演技とはこうあるべき見本とも言える香川照之、オダギリジョーの両者がすばらしい。そして、この監督の卓越した観察力と描写力には驚かずにはいられない。
 「クラッシュ」は昨年のアカデミー賞作品賞。善と悪に二分できない人間の多面性を、最後まで息のつけないスリリングな展開で、見事に描いている。張り巡らされている伏線は巧緻で破綻がなく、ハリウッド映画の底力を十分見せつけてくれる。
 

絲山秋子好き

 一週間前の暑さが嘘のように涼しい1日。夜風が気持ちいい。このまま秋になってほしいけど、そうもいかない。
 今日は担当しているPR誌の半年分の企画を考える。最近、そればかり。なかなかいい企画が浮かばない。18時には切り上げて、帰りに本屋に立ち寄る。店の入り口では、出版社の営業社員なのだろう、銀座特集の「サライ」を声を張り上げながら売っている人がいる。とても「サライ」らしい特集だけど、買わない。ビジネス書の棚で、福岡コピーライターズクラブ?の本を手に取る。福岡は好きな町なひとつだ。学生時代を過ごした思い出があるので、つい気になってしまう。時計の広告は良かった。コピーというより、時計をテーマにしたショートショートという趣だけど。
 平積みの絲山秋子の初エッセイ集「絲的メイソウ」と、川上弘美の新刊「ざらざら」を購入する。どちらも好きな作家だ。「絲的メイソウ」の装幀は秋山具義となっている。著者となにかしら関係があるのだろうか。気になるな。絲山秋子は、福岡好きを公言している。うれしいことだ。これからもずっと読んでいきたい。エッセイは少し自意識過剰なところもあるが、さすがに観察眼は鋭く面白い。リラックスして書いている様子が伝わって、こちらも楽しくなる。初対面の人をほめるのが、絲山流の処世術らしい。今度、試してみよう。川上弘美の新刊はチョコレートをなめるようにじっくりと読みたい。
 帰りの電車のなかでは、サンボマスターを聴く。日本のロックバンドも捨てたものではないなって思わせる。いつかインタビューしたい。
 今週はお酒を抜いている。今日で4日目。ここ数年では珍しいことだ。夕食後は、娘とボール遊び。最近、母親の口真似をよくする娘。「ダメじゃない、パパ、変なものばっかり食べて」。
 ピーナッツぐらい食べてもいいだろ。娘とはいえ、けっこう気に障ります。

モエレ沼公園

 今月は仕事が暇なので、ちょっと早めの夏休みをとる。夏休みといっても、梅雨まっただ中だから、なんだかもったいないような気もするけど。週末の3連休は、家族全員で北海道へ家族旅行。北海道は通算4度目だろうか。少し久しぶり。
 札幌、小樽を巡って、宿泊は小樽から車で40分ほどのところにある「キロロリゾート」。ヤマハ系のリゾート施設で、高級リゾートとはほど遠いが、山々に囲まれていて環境はまずまず。2日目は、周辺のレジャー施設で遊ぶ。娘は、バンジートランポリンがひどく気にいった様子だ。すごく楽しそう。幼い顔にも恍惚感が広がる。その幸せが、眺めている僕らにも伝わってくる。午後は、以前から楽しみにしていたプールで、娘と2人で戯れる。こちらもすごく楽しそう。水を怖がることもなく、終始笑顔ではしゃいでいる。僕はクロールを何本かやったら、息があがってしまった。でも、体を動かすことはやっぱり気持ちがいい。水泳、始めようかなと本気が思ってしまう。
 3日目は、念願のモエレ沼公園へ。高台から眺めても、一目では把握できない広大な敷地に、彫刻や池、山、建物などが点在している。全体が、地球というキャンパスに描かれたひとつの作品だ。ノグチ・イサムの世界観のなかに迷い込んだような気分になれる。巨大な人工物だけど、自然と同じような居心地の良さを感じるのはなぜだろう。隅々まで計算され、ここには暗闇とか死角がなく、すべての場所がノグチ・イサムの美意識という白日の下に、その輪郭がくっきりと浮かび上がっている。芸術家にとって、地球を掘るというのは究極の表現方法に違いない。それって気持ちがいいんだろうなって思う。素人だって頭のなかでは作れることができるけど、具現化させることは難しい。しかも破綻なく。
 あいにくの天気で、すべてを見てまわることができなかった。でも、また来よう。そういえば「ノルウェイの森」に出てくる、直子と「僕」が歩いた森のイメージにどこか似ている。ケガレや悪意が排除された、透明で瑞々しい空間。一人で歩くには寂しすぎて、家族で歩くのもどこか不似合いだ。

フレンチレストラン

 久しぶりの日記。昨日は、弟の店へ家族で出かける。場所は多摩センターから歩いて5分、見晴らしの良い丘陵地に佇むフレンチレストラン。弟はここでシェフを務めている。以前から行こうと思っていたけど、のびのびになって、昨日が初めての訪問。
 個室感覚のフレンチが多いなかで、ここは仕切りのない広々としたワンフロアに、食事と喫茶スペース、雑貨売り場が美しくレイアウトされている。無垢のフローリングに開放的な全面ガラス張り、テーブルも椅子も北欧風で、気持ちがいい。女房と義母、僕はそれぞれ3,000円ほどのランチコースで、娘には特別にお子様ランチ。産地や作り手の名前を冠したオーガニック食材をふんだんに使った内容で、満足。お腹いっぱいになっても、それほど胃にもたれない。コース名の「涼美」にうなずく。弟にしては、意外といい仕事しているなって思う。
 弟といっても、僕らは双子という関係だ。子供のころからずっと同じものを食べて、同じテレビを見て、同じスポーツをして、高校まで同じだった。僕も料理は好きだし、弟もきっと文章を書くことは好きだと思う。だから、僕がシェフになってもおかしくなかったし、弟がライターになっていてもおかしくなかった。弟の友達は僕の友達でもあり、僕の友達は弟の友達でもある。双子は一粒で二度おいしい。
 今現在、違うところといえば所帯持ちかそうでないかの差だが、それも時間の問題のようだ。サービスしてくれた女性スタッフと結婚を前提につきあっているらしい。「あなた、弟の彼女と私を交換したいと思っているんでしょ」と女房。えっ。
 それ、正解です。



さくらんぼ

 昨日に引き続き、出張校正。これで、今月号も終わる。会社に帰って、来月に取材するオペラ歌手のアポ取りを済ませて、「チョコレート」について短い原稿を書く。もう周囲は休刊月モードに入り、のんびりしている。そんななかだから、どうもやる気がおこらず、あくびばかりが出る。2日前に行った「てもみん」のもみ返しなのか、左首が痛い。会社での話題は、サッカーばかり。もううんざりだ。
 19時前には会社を出て、先輩のKさんと一緒に池袋まで帰る。Kさんはいつも調子がいい。赤羽駅内のレンタルショップでまた、DVD2本借りて帰宅。「戦国自衛隊1549」と「容疑者室井慎次」。新聞のテレビ欄を見ると「戦国自衛隊1549」とある。えっ、ダブルブッキング。女房に「ばっかじゃない」と言われる。こういう何でもないひとことに、とても悪意が満ちている。夕食後のデザートは、青森産のさくらんぼ。女房のいとこからの新築祝いで、今朝届いたものだ。さくらんぼって、一度に10個以上食べたことがないような気がする。だから、ずっと食べ続けていると舌がしびれてきて、13個食べたらもう十分。これって、生で食べる以外、おいしい食べ方ってないのかな。あと、3日間分はある量だ。
 12時。ドイツ対アルゼンチンを見ていたら、また女房の機嫌が悪くなる。最近、いつもそうだ。女ってどうしてこうもすぐに感情的になるのだろう。娘にもすぐに声をあげる。その声を聞くのがとてもつらい。結婚して、その短気が、自分にも少し移ったような気がする。反対に、女房は少しは気が長くなったのだろうか。いや、きっとそれはないな。
 明日は、ジョギングしよう。

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プロフィール

Author:ナツメ
35歳。妻と娘(5歳)、義母の4人暮らし。職業はライター。趣味は読書、ジョギング、散歩。

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